訪問看護ステーションえくぼ管理者 宮岡 直美


訪問看護について

訪問看護が在宅支援を行うのには、医師の訪問看護指示書が必要となります。訪問看護は病名や病状の状況に応じて、医療保険や介護保険、労災保険などの利用が可能となっています。介護保険の利用では、ケアマネジャー(介護支援専門員)の計画に基づいた看護が必要になります。ご利用者様が望むから、何でもできる…といったことでもありません。必要な条件や必要な看護を提供できるよう介護保険や医療保険の制度があり訪問看護がご利用できます。っても、時には、連絡がつかない往診医や病院、介護専門員もあり困惑する経験も多少はあります。その経験を活かしながら、緊急連絡先をお聞きし、24時間体制で訪問看護師が在宅療養者の方に寄り添い対応できるよう支援しております。


訪問看護の役割の変遷

訪問看護に携わり、今年で22年目になります。関わり始めたころは、介護保険制度が始まったころでした。現在の訪問看護と比較すると、ずいぶん変化を遂げてきたように感じます。往診や訪問診療の診療上の補助の看護師としての役割から、多職種連携を行いながら、在宅における療養上のお世話を中心として、病状の緊急時の対応をはじめ、保清など清潔面に関わり、皮膚の観察を行いながら利用者様のADL(日常生活動作)の確認も行い評価させていただき医師やケアマネジャーに報告し、問題があれば解決できるように一緒に考え必要な支援を行います。

また、薬剤管理とし、配薬を含め残薬や、インスリン施行、塗布剤の評価や緩和ケアの疼痛コントロールの評価なども医師や薬剤師さんとの連携を行いながら行うことも多くあります。インスリンの施行の手順確認や血糖測定の見守りをはじめ、褥瘡の管理、気管切開をされている方の管理や、胃瘻の管理、尿管の管理など多くの医療処置が自宅でできるようになってきています。

訪問看護師の役割が、以前に比べて世間から認められるようになり看護師の意識改革も進み、連携の中でも訪問看護師の意見を聞いて頂ける先生方も増え、在宅での訪問看護師の役割が発揮できる時代になってきたように感じます。

それでも、自身が所属する訪問看護の事業所の条件や特化している訪問看護の内容によって、訪問看護の考え方や在宅支援の関わり方がずいぶん違いがあります。

精神特化型のステーションもあれば、リハビリ特化型、そして小児や慢性疾患、がん患者や難病に特化した訪問看護ステーション、褥瘡やストマケアの皮膚に特化した訪問看護、24時間緊急対応できる訪問看護ステーションなど様々にあります。事業所のスタイルとしては、病院付属もありますし、個人事業所、施設併設などがあります。その観点からも、利用者様や関わるケアマネジャーや病院の地域連携室や医師が訪問看護ステーションを選択できる時代がやってきたように感じます。

病院や診療所でしかできていなかったことが、療養場所が自宅(サ高住も含む)に変化し、介護保険の普及により介護用ベットや車いす等が自宅に整い、手すりの設置など介護用品が普及し介護環境の整備ができるようになった事も自宅療養ができやすい条件に繋がっていると感じます。

また、携帯電話の普及も後押しをし、ナースコールのように電話での連絡が取りあえるので、ご本人はもとより、ご家族も安心し自宅療養できているのではないかと感じます。

医療連携に関しても、私たち訪問看護師も病院や医師との連携が以前よりずいぶんスムーズであり、夜間休日に問わず緊急対応もいち早く対応できるようになってきたように思います。そういっても、時には、連絡がつかない往診医や病院、介護専門員もあり困惑する経験も多少はあります。その経験を活かしながら、緊急連絡先をお聞きし、24時間体制で訪問看護師が在宅療養者の方に寄り添い対応できるよう支援しております。


笑顔ある利用者様主体の在宅支援

笑顔の様子

在宅支援の良さを感じられるようになったのは、10年目くらいだったかともいます。寄り添いの大切さや、各個人の個性を考えながら関わっていく事で、病院とは違った安らぎや安心感があります。利用者様は、病気と闘いながら、つらく苦しい悲しい時もありますが、住み慣れた環境の中になじみの顔があり、なじみの生活の音があり、療養者としてではなくご家族の一員としての役割がある生活の場所です。

訪問看護ステーションえくぼを開設し、今年で7年目になります。現在の利用者様、終了となられた方も含め1088人のご利用者様に関わらせて頂いております。

えくぼは現在、24時間体制で緊急時にも迅速に動けるように体制を整えながら、看護職9名とリハビリ職3名事務職員が3名が在籍し、訪問看護を行っています。当事業所の特徴は、難病の方々やがん療養の方の自宅療養支援が多く関わらせていただき、看取りに特化した訪問看護ステーションといえると思います。昨年度より、同敷地内に居宅介護支援事業所も併設し、「笑顔ある利用者様主体の在宅支援」を目標に掲げ、自宅療養の支援をさせて頂いています。 


多職種連携を通じて

多職種連携のイメージ

サ高住も含めて、ご自宅は病院や施設とは違った住み慣れた環境の中、使い慣れた家具に囲まれ、家族の声がする温かで安心できる環境があります。馴染みのご近所様がいて、時々話し相手に来て下さり、ほっとできる良さもありますが、病院とは違って緊急時の対応をサ高住も含めて、ご自宅は病院や施設とは違った住み慣れた環境の中、使い慣れた家具に囲まれ、家族の声がする温かで安心できる環境があります。馴染みのご近所様がいて、時々話し相手に来て下さり、ほっとできる良さもありますが、病院とは違って緊急時の対応をどのようにするかなど、不安も多くあるので、多職種連携をしっかりすることにより安心した在宅療養ができるのではないかと思っています。

病状、環境、介護力、経済力、様々な条件により訪問看護サービスの介入の状況は違ってきます。多職種が意見交換を行いながらの連携を行うことにより、利用者様が安心し自宅療養できる体制が構築できます。

訪問看護事業所としては、必要な時に緊急でも対応できるよう業所体制の整備を行い緊急時の対応が十分できるように配慮してきました。

がん患者様や難病の方を多くご自宅でお看取りさせて頂きました。

様々な経験をさせて頂く中、印象に残った在宅支援も多くありますが、いつも感じることは、在宅の主体は利用者様やご家族様であり、ケアする側の医療介護連携がキーポイントであり安心した在宅支援へと繋がりますので、連携はとても大事だと感じています。

様々な疾患がありますので、アンテナを高く上げ、訪問看護師が、いち早く病状を察知し、主治医の先生方(往診医・病院の医師や地域連携室)やケアマネジャーに利用者様の病状、介護状況、環境状態、精神状態など現状の状況を正確にお伝えすることにより、住宅環境や介護介入の現場を把握し、多種多様の環境の中、より良い状態で在宅療養ができることが安心できる寄り添ったケアが行われると思います。


エンゼルケアとグリーフケア

訪問看護ステーションえくぼでは、コロナ禍の影響もあり、病院や施設ではご家族の面会も十分にできないとの理由もあり、自宅療養が2年前から急激に増加傾向にあります。

この6年半で自宅療養の末にお亡くなりになった方は500名を超えています。3日に一人の看取りをさせて頂いていることになります。看取りの場面では、個人のお気に入りや好きだったお洋服や着物などを事前にお伝えし、準備していただいておきます。旅立ちの準備(エンゼルケア)をご家族とご一緒させていただくようにしています。故人を亡くされ泣いていた方々が生前の故人様に触れ、思い出話に花が咲き、笑いが起こり穏やかな最期を迎えられ、エンゼルケアを通しご家族が死を受容される場面が多くあります。

多くの方々のお看取りをさせて頂き、いつも感じることは、お看取りに際し様々な経験を積ませて頂き、学ばせて頂いていることの感謝を忘れないようにスタッフと振り返りをしています。

えくぼでは開設当初から、ご家族のグリーフケアも含め遺族アンケートのご協力を依頼させて頂いています。お看取り後に自宅に出向き、供花をし、家人が故人を偲ばれる機会になればとアンケートの依頼を行います。時に悲しい思いをされる方もあり、複雑な気持ちもありますが、今後の療養される方にも情報提供ができるよう、お看取り後の遺族アンケートのご協力を今後も継続していきたいと考えます。

多くの在宅経験を活かし、今後も訪問看護師ができることは、寄り添いの看護だと思います。安心して利用者さまが療養できるよう、多職種連携し今日も笑顔でがんばっていきます。