歳を重ねれば自然に起きる「もの忘れ」、それは「認知症」ではありません。「認知症」とは何かを知り、正しく理解をすることが早期発見へのきっかけになります。早い段階で治療を始めることができれば、進行を抑えることもできます。


「加齢によるもの忘れ」と「認知症によるもの忘れ」の違いとは?

物忘れの様子

歳をとって脳に生理的老化が起こり、それがもの忘れという形で現れるのが「加齢によるもの忘れ」です。これはほぼ誰にでも起こる症状で、何かしらのヒントがあれば体験したことの記憶が呼び覚まされます。本人に「もの忘れ」の自覚があり、判断力には問題がなく、進行性はゆるやかで日常生活に大きな支障はありません。


三大認知症とは?

これに対し認知症とは、脳の神経細胞が何かしらの原因によって、壊れてしまったことで起こる症状です。「認知症によるもの忘れ」の場合は、体験したこと自体の記憶が消えてしまうのです。少しずつ症状は進行し、人により違いがありますが、著しく急激に進行するケースもあります。また、「もの忘れ」している自覚が本人になく、集中力や判断力も衰えるため、日常生活に支障をきたすようになります。

顔を覆う高齢者の様子

認知症にはさまざまなタイプがありますが、良く知られている認知症として「アルツハイマー型認知症」「レビー小体型認知症」「脳血管性型認知症」の3つがあります。種類によって症状が異なってくるので、それぞれの症状に合わせたケアを考える必要があります。


「アルツハイマー型認知症」

アルツハイマー型認知症は、日本人に最も多くみられる認知症で、男性より女性に多いと言われます。異常なたんぱく質が脳に溜まって記憶をつかさどる脳の「海馬」から委縮が始まり、やがて脳全体が委縮していきます。

その最初の症状として現れるのがもの忘れです。食事をしたこと自体を忘れたり、日付や時間、家族の顔が分からなくなったりと、認知機能に障害が現れます。やがて、ものを盗られたと思い込む、被害妄想、徘徊などに至ることがあります。

アルツハイマー型認知症は、もの忘れから始まって、年単位で徐々に進行していきます。


「レビー小体型認知症」

レビー小体型認知症は、レビー小体という特殊なたんぱく質が脳に生じ、脳神経細胞が破壊されて起こります。脳の中にはっきりとした萎縮が見られないことが多いのも特徴です。

このタイプで最もよく言われる症状が、実際にはいないのに人がいるように見える幻視です。抑うつや、眠っている間に奇声をあげたりする、また自律神経症状が現れることがあります。手足が震える、小幅で歩行するなど、パーキンソン症状が出るケースもあります。

レビー小体型認知症の場合、初期症状としてもの忘れが目立たない場合があり、またパーキンソン症に似て見えるため、診断の難しい認知症です。症状の現れ方も、調子の良い時と悪い時のゆれが大きく、やがて次第に進行していきます。


「脳血管性型認知症」

脳梗塞や脳出血などが原因で脳の血液循環が悪くなり、脳の一部が壊死してしまったため起こるのがこのタイプで、画像にはっきりと壊死部分が写し出されます。

症状としては「まだら症状」と言われるように、残っている能力と障害を受けた能力が混合しています。そのため、記憶と判断力は比較的保たれていますが、手足のしびれや麻痺といった症状が現れやすく、感情の起伏が激しくコントロールがしにくくなることがあります。

原因となった脳梗塞や脳出血などにともない、症状は階段状に進行していきます。


忘れてはならない軽度認知障害(MCI) 

思い出そうとしている様子

軽度認知障害(MCI)とは認知機能に問題が生じ始めている、いわゆるグレーゾンの段階です。記憶力や言語能力、判断力などの認知機能にやや衰えが見られるものの、日常生活には支障がない状態を指します。この健常者と認知症との中間の段階で、認知機能の低下にいち早く気付き、対策をとることが認知症予防の重要なポイントです。

この段階から適切な治療や予防に取り組むことで、認知機能の改善が見られたり症状を抑えることができたりします。それにはやはり、認知症について正しい知識を持っている必要があるでしょう。


大切な予防

現代医学では完治は難しいと言われる認知症ですが、早期発見による適切な対策によって、最後まで認知症の症状が出ないこともあります。また、今はまだ問題がないという方も、積極的に対策を講じておくことは確実な予防につながります。効果的と言われる予防策をいくつかご紹介します。


適度な運動

ヨガをする高齢者の様子

一日30分程度の有酸素運動を週に3回以上行うことが、認知症予防に効果的だと言われています。有酸素運動とは、ウォーキングやジョギングのように呼吸をしながら運動することです。ヨガなども身体と精神のバランスを整えるのに役立ちます。

また、運動と同時に計算やしりとりといった、別な作業を行う「デュアルタスク」は、脳に刺激を与えるため、さらに効果が期待できます。


食事

高齢者に食事を用意する様子

糖尿病や高脂血症などの生活習慣病も、認知症の大きな要因と考えられています。塩分を抑え、野菜や果物、魚、大豆製品、オリーブオイルなどを積極的に摂り、バランスの良い食事を心がけましょう。


社会的活動

家族で散歩をする様子

引きこもりがちになって社会との交流が少なくなると、認知症の発症リスクが高まると言われています。家族や、趣味などを通じた仲間とのコミュニケーションは、脳に刺激を与え活発化させます。また、無理なく続けられる趣味を持つことは、精神的にも安定し豊かな生活をもたらします。


認知症に関する正しい知識と予防を

医師が脈をとる様子

認知症は誰もが掛かりうる可能性があります。それぞれの症状を知っておくことは、早期発見への、そして予防への第一歩となります。認知症かな?と思ったら、臆さず早めに診断を受けることをおすすめします。

ひとり暮らしの高齢化社会が進む中で、身体的機能、そして認知機能が衰えていく不安は、本人はもとより家族にも大変大きなものがあります。より快適な医療・介護環境を確保するためにも、またいざという時に慌てないためにも、元気で判断力のあるうちに、サービス付き高齢者向け住宅への住み替という事を、選択肢の一つとして考える時代が来たのではないでしょうか。

誰もが描く明るい老後へ向けての準備に早すぎるということはありません。サービス付き高齢者向け住宅では、入居者同士による適度なコミュニケーションと自立が保たれ、孤独や不安に陥ることなく「生活」することができます。専門家による「安否確認」「生活相談」は当然ながら、それ以外にも同世代の入居者の方たちとともに、健康維持に役立つ機能訓練体操をはじめ、さまざまなレクリエーションを行っています。安心安全な見守りのもと、社会との繋がりを保ちながら不安の少ない暮らしやすい日常を長くキープする、それが最も効果的な認知症予防となるでしょう