姫路中央病院

地域連携室長兼看護部次長 中藤恵美

看護師免許取得後、そろそろ35年が経とうとしていますが、私は病院でしか仕事をしたことがありません。在宅で患者様、ご家族さまと関わっておられる方のご苦労をお聞かせいただくことはあっても、実情は私が存じ上げている以上に大きなご苦労があるのではないかと思います。

最近では自分の問題処理能力が落ちてしまっているのでは??と自分自身に自信がなくなることがあります。買い物に行っても、必ず何かひとつ買い忘れる、メモ用紙に買いたいものを書いていても、メモ用紙を持参し忘れる。頼まれた用事をまるっきり忘れてしまう…

自分がしなければならないことは必ずメモをとるようにしていますが、急いでいるときには殴り書きのメモ。あとで見直してもなんのことやら?? 特に大きな病気をしたわけでもないのに、平均寿命を半分過ぎただけでこんな事態です。落ち込むこともありますが、日々を楽しく過ごそうと、気持ちの入れ替えをしながら生活しています。

年齢を重ねると環境の変化が、体にも心にも負担になってくるようです。

例えば難病の一つであるパーキンソン病は高齢になると発症する確率が高くなるといわれています。認知症もそう言われる疾患の一つです。 どの疾患にしても、病気を患うと生活が一変してしまいます。 それは病気を患ったご本人、そしてご家族も。

『ときどき入院 ほとんど在宅』と言われるようになり、病気を患っても、住み慣れた地域で、長く住み続けることが出来るような社会を実現しようと動き出しています。

難病について

難病の歴史

昭和47年に厚生省が難病対策要綱を発令。

当初は「原因不明、治療法未確立であり、かつ、後遺症を残す恐れが少なくない疾病」として、対象疾患8疾患からスタートしています。

平成27年には難病対策が大きく変わり『難病の患者に対する医療費などに関する法律』となりました。現在では指定難病336疾患となっています。

難病とは

①発病の機構が明らかでなく。②かつ、治療方法が確立していない希少な疾病であって、③当該疾病にかかることにより長期にわたり療養を必要とすることとなるものをいう」と示されています。

私の所属する病院では神経難病と診断された方が多くおられ、多く診ている疾患ではパーキンソン病、脊髄小脳変性症、多系統萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、重症筋無力症、多発性硬化症、筋ジストロフィー症があります。中には日本で100人程度しか診断されていないファブリー病の方もおられます。

神経難病の中には、長い経過をかけ確定診断がつくものや、はっきりした原因や治療法がないもの、日常生活が可能になるような治療法が確立されているものもあります。外来で何カ月も経過をみさせていただくこともあれば、いろいろな病院への受診を重ね、当院に来られることもあります。 症状が緩やかにでてくるものや、診断後、急速に進行するものもあります。 医療が関わることで、少しでも生活が楽になるよう関わっていきたいと思います。

難病患者さまへの支援は、病期により関わりが異なります。 これまでの看護師経験の中で、外科病棟では癌を患い入退院を繰り返される患者さんに出会いました。最期の時を心穏やかに過ごしていただき、残される家族の方に後悔が残らないように…と思いを巡らせていました。                                                                                                                                                                    言葉がけの難しさを感じ、私自身の心の持ちよう考えが向上できるよう研修会に出かけていました。

そんな中、神経内科の病棟で難病患者さんと出会い、なんと辛い思いを長く感じる病気があるものだ、と学校で習ってきたこととは全く違うイメージの患者さんが目の前におられることに衝撃を受けました。 動きがままならないことへの身体的、精神的負担を感じている患者さまや、ご本人の問題行動(疾患からくる症状)に悩まされる家族の現状を目の当たりにし、声掛け、対応の難しさを感じました。 生活への関わりは病院だけではなく、在宅で関って下さる医療・介護従事者の方のお力も大きな支えになります。

診断の告知

診断後の告知を希望するかどうか…それぞれに想いがあると思います。

『病気を知る』ということは、自分のこれからの生活設計をするうえで大事なことではないかと思います。

診断を受けるまでにも多くの不安を持ち、大きなストレスとなって、告知をされた後でもそのストレスは続きます。病気の進行によって自分の身体を自分の意志で動かすことが難しくなり、生活への手助けが必要になってくる時期もあります。今後、出来なくなることが増えていったときに、どうしていきたいか…。考える時間が必要です。

疾患の理解をし、自身に起こってくる症状に嘆き、未来を考えると途方に暮れる…そんな感情の移り変わりを一人で抱えていくのはとても辛いことだと思います。 んなお気持ちを医療者はひろえるようになりたいと思っています。 当院の神経内科医師は難病の告知をする際に、外来ではなく入院時にお知らせすることを心掛けています。

「難病を告知されて、平静心でいることは難しい。家族のフォローはもちろん大事だが、家族背景は外来だけではわからない。背景の確認や告知後の患者さんの状況を確認するために入院中にしようと思っている。」との返答でした。 でもずっと入院、ではありません。ご自宅に帰られます。病院と違って自宅にいるほうが自分の気持ちを素直に表出できるのではないかと思っています。そのとき、家族の支えはもちろんですが、第3者となる医療、介護従事者の方の力は強い味方になると思います。その時にも私たちは寄り添うことができれば…と思っています。 しかし医師からの教えを受けていたのに、私の面談には多くの失敗があります。 病状が進行していく中で、今後ご希望されることをお伺いしていたとき、ご本人に大変失礼な発言をしてしまったことがあります。それまで築いていたと思っていた関係性はズタズタです。その後はご本人、ご家族からも距離をとられることになってしましました。申し訳ない気持ちでいっぱいになりましたが、取り返しは尽きません。 っかり受け止められる気持ちや対応ができるようこれからも自己研鑽に努めたいと思っています。

『難病』というと「寝たきり」「働けない」と思われてしまうこともありますが、難病医療の進歩は著しく、多くの難病は慢性疾患化しており、疾病の治療を続けながら職業生活を含む普通の日常生活を送ることが出来る人が増えています。 担当する主治医から本人の病状説明や治療方針を聞き、今の状況には何が必要で、どうすることが良い状況になるのか相談しましょう。

難病の施策が整備されたことでよくなったことの一つとして、医療費の助成制度があります。一定の診断基準を満たしていれば指定難病医療費助成制度の利用が可能になります。その他の社会保障として介護保険や身体障碍者制度の利用など、状況に応じて取り入れられる仕組みを活用しましょう。

最近は情報社会ですので患者さんやご家族は、ご自分で調べることができます。症状が気になったときや、告知を受けたとき、難病手続きの説明を受けたとき…。 今回、診断後間もない方が特定疾患の申請の説明を聞かれた後に、ご自分でネット検索をされ「私はこの病気ではありません。この病気だとすれば、私は1年後に存在していないかもしれない。この病気ではないと思っています。」と仰ったとスタッフから報告がありました。

多くの患者様との出会いがあり、その出会いが毎回、勉強になっています。

家族の状況は、入院生活だけではわからないこと、家族の支援がどれだけ大事で、ご本人の生きる気力にさえなっていること、そしてご家族もご本人の存在がかけがえがないこと、病気になってお互いに感じ合えることもあり、進行していく中でいろいろな想いを感じ取りながら日々を過ごされていること、不安や疑問を持ちながら日々過ごすのではなく、十分に理解した中で話し合いを重ね生き抜いていく、その段階の一つとして私たちを使っていただきたいと思っています。