近年、新型コロナウイルスの感染拡大や、ロシアによるウクライナ軍事侵攻、防衛費増額による増税など、社会情勢や国の制度が目まぐるしく変化しています。

老後は安心して暮らせるのか、不安を募らせている方も多いのではないでしょうか。頭の中で試行錯誤するだけでは不安は消えません。不安を和らげるには老後の備えを万全にすることが重要です。

そこで今回は、老後で特に必要となる備えについて解説します。本記事を参考にして、少しずつでもよいので、老後の備えを始めてみてください。

老後で特に必要な備えは?

平成28年版厚生労働白書には、高齢社会に関する意識調査で、老後に不安なことについて調査した結果が掲載されています。

「あなたにとって、老後に不安が感じられるものは何ですか(※回答は3つまで)」という質問に対する回答結果の割合は下記の通りです。

回答割合
健康上の問題73.6%
経済上の問題60.9%
生きがいの問題23.1%
住まい・生活上の問題17.6%
家族や地域とのつながりの問題10.8%
大きな不安はない8.8%
その他0.1%
わからない4.1%

参考:平成28年版厚生労働白書-人口高齢化を乗り越える社会モデルを考える-(厚生労働省)

老後は、「健康上の問題」「経済上の問題」などに不安を感じる方が多く、「生きがいの問題」「住まい・生活上の問題」などにも不安を感じやすくなっています。

したがって、病気やケガに関すること、お金に関すること、暮らし方などについて備えが必要です。

老後の病気やケガに対する備え

老後に注意すべき病気やケガを確認してみましょう。厚生労働省の国民生活基礎調査(2019年)によると、要支援者で介護が必要になった主な原因は下記の通りです。

第1位第2位第3位
要支援者関節疾患(18.9%)高齢による衰弱(16.1%)骨折・転倒(14.2%)

参考:2019 年 国民生活基礎調査の概況  p24 表18 現在の要介護度別にみた介護が必要となった主な原因(厚生労働省)

病気とケガに関する原因に絞り、関節疾患と骨折・転倒に関する備えをまとめてみます。


【関節疾患】

関節の痛みイメージ

関節疾患は、加齢による軟骨の摩耗によって関節が炎症を引き起こし、痛みや腫れなどを感じる症状です。

関節疾患を予防するには、関節に負担をかけない生活が大切になります。体重を減らしたり、同じ姿勢を続けないようにしたりする生活習慣を取り入れましょう。

参考:

関節疾患について(和歌山県立医科大学附属病院紀北分院)

vol.29 ひざやひじの関節痛の原因と予防策(OMRON)


【骨折・転倒】

骨折・転倒を防ぐ備えとして挙げられるのが、老後に向けた自宅の環境整備です。

たとえば、トイレに立ち座りの負担を減らせるように手すりを設置したり、段差がある部分に手すりを設置したりするなどの備えを検討できます。そのほか、マットを滑り止め効果のある製品に交換するのも効果的です。

参考:転倒予防のススメ(聖隷淡路病院)

老後のお金に関する備え

老後の備えに必要なお金を明確にするためのステップは下記の通りです。


ステップ1:退職後の毎月の生活費を計算する

まず、退職後の毎月の生活費を計算します。一般的に退職後は、仕事に必要な費用の減少や住宅ローンの完済などによって生活費が減少します。そのため、現在の生活費の約7割として、退職後の生活費を算出してみましょう。


ステップ2:退職後の毎月の収入を計算する

退職後に支給される年金による収入を確認します。年金額に関しては、厚生労働省の公的年金シミュレーター(試験運用中)が役に立ちます。働き方や暮らし方の変化に応じて、将来受給できる年金額を試算できます。

参考:公的年金シミュレーター使い方ホームページ(厚生労働省)


ステップ3:退職後の毎月の収入と毎月の生活費の差額を計算する

生活費の計算イメージ

退職後の毎月の収入と毎月の生活費の差額を計算します。公的年金によって不足する収入を把握したら、退職金や貯金などで補えるかどうかイメージしてみましょう。

補うのが難しそうであれば、貯金額の増額や副業の準備なども検討してみてください。

老後の暮らし方に向けた備え

老後に活き活きと暮らすには、どのような場所で過ごすか考えておくことが大切です。

厚生労働省による「高齢社会に関する意識調査(平成28年2月実施)」では、40歳以上の男女3,000人を対象に、希望する場所で暮らすために必要なことを調査した結果を公表しています。

希望する場所で暮らすために必要なことについて得られた回答結果(※回答は3つまで)は下記の通りです。

希望する場所で暮らすために必要なこと回答結果
家族による手助けがあること25.5%
介護保険のサービスが利用できること38.2%
介護保険以外のサービス・支援が利用できること17.7%
医療機関が身近にあること54.3%
公園・緑地などの憩いの場があること10.0%
地域の人が気軽に集える施設があること13.6%
交通の便がよいこと30.1%
災害や犯罪などに対する地域での取組みがあること3.4%
近所での助け合いや協力があること12.6%
買い物をする店が近くにあること34.0%
その他0.4%
特にない7.5%

参考:平成 27 年度少子高齢社会等調査検討事業報告書 p21(厚生労働省)

多くの方が、医療機関が身近にあることや、買い物をする店が近くにあることなどを重要視しています。老後の暮らしで、安心と利便性を求める方が多いとわかります。

家族による手助けがあることを希望している方は、4分の1以上の回答結果となっており、決して少なくありません。場合によっては、家族のそばで暮らすことも検討する必要がありそうです。

人それぞれ希望する条件は変わってきますが、住まい環境を突然変えるのは負担が大きいです。老後で暮らす場所について自分が希望する条件を、なるべく早く考えておきましょう。

老後の備えを万全にすれば安心して暮らせる

今回は、老後の備えについて病気やケガ、お金、暮らし方の観点から解説しました。
特に必要となる備えを具体化していくことで、不安が和らいできたのではないでしょうか。
老後に向けて今からできることは意外とたくさんあります。

関節に負担をかけない生活を意識したり、退職後に受け取れる年金を試算したり、安心して生活できる場所を探したりするなど、やるべきことはさまざまです。

余生を穏やかに過ごすためにも、老後の備えを万全にしておきましょう。