日本の平均寿命は世界でもトップクラスであり、世界有数の長寿国として知られています。

しかし、健康で自立した生活を営める「健康寿命」と「平均寿命」の間に開きが生じており、その期間は介護あるいは何かしらの介助が必要になる状態を意味しています。

今回は、日本の平均寿命と健康寿命の状況をはじめ、健康寿命を引き延ばすポイントについて解説していきます。

平均寿命と健康寿命の状況


女性男性
平均寿命87.45歳81.41歳
健康寿命75.38歳72.68歳

※厚生労働省「健康寿命の令和元年値について」より

厚生労働省は令和3年12月、「健康寿命の令和元年値について」において、令和元年(2019年)における平均寿命と健康寿命について公表しています。

平均寿命と健康寿命の差については、女性では約12年、男性では約9年が生じており、年々その差は縮小していることが知られています。

厚生労働省が定めている「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」では、2040年までに男女ともに、健康寿命を3年以上伸ばすことを目標にしています。

平均寿命と健康寿命の状況

健康寿命を引き延ばすポイント

  • 生活習慣病の予防
  • 高齢者に多い病気の予防・重症化予防
  • 介護予防・フレイル対策・認知症予防

誰しも病気や介護状態になることを望んでいる訳ではありませんが、健康で長生きするためには、そのポイントを明らかにして予防に取り組む必要があります。

そのポイントとして、上記3つにまとめることができます。


要介護者から介護が必要となった原因を調べてみると、その原因として多いものは次の通りです。

体調不良の様子
  • 脳血管疾患
  • 認知症
  • 高齢による衰弱
  • 骨折·転倒
  • 関節疾患
  • 心疾患(心臓病)

※厚生労働省「健康日本21(第2次)」より

このような状況を踏まえると、これらの原因となる生活習慣病を予防し、病気の予防や重症化を防ぎ、介護予防や認知症予防に努めることが大切であると考えられます。

特に、脳血管疾患は年々、死亡率は減少傾向にありますが、介護状態になる原因としてもっとも高いために、その予防に取り組むことが重要でしょう。

また、認知症は年々増加傾向にあり、2025年には65歳以上の5人に1人が認知症を発症するというデータもあることから、認知症予防も大事であることに間違いありません。


生活習慣病の予防

メタボリックの様子

生活習慣病とは、生活習慣が影響を及ぼしていると考えられる病気の総称であり、肥満や糖尿病、高血圧といった動脈硬化の危険因子のあるものや、脳卒中や心疾患なども含まれます。

例えば、高齢者に多い心疾患の危険因子として「脂質異常症」が挙げられますが、肥満によって血液中のLDLコレステロール上昇がリスクになると考えられています。

また、認知症の発症は、危険因子となる糖尿病やメタボリックシンドロームを予防することが重要であることが知られています。

さらに、ADL(生活機能)の低下を引き起こすリスクも高く、転倒や骨折を引き起こさないためにも、運動習慣を取り入れるなど身体活動を低下させないように努めることが大切です。

老年期を迎えると、不安や内科的疾患、更年期障害などによってうつ病を発症し、外出の機会が失われるケースも増えていることから、心身両面からの支援が必要になります。


高齢者に多い病気の予防·重症化予防

血圧を測る様子

高齢者になると病気によって通院する割合が高くなり、70歳以上では70%以上で何らかの治療のために通院していることが知られています。

通院内容で見てみると血圧に関するものが多く、特に高血圧は脳出血や脳梗塞、くも膜下出血などの脳血管疾患、心筋梗塞や狭心症などといった心疾患を引き起こす原因となります。

その中でも脳血管疾患は、上記でもお伝えした通り、介護状態になる原因としてもっとも多いものです。

介護度が高くなるほど、脳血管疾患が原因となっている割合が高いことから、日常から脳血管疾患を生じさせないように過ごすことが大切です。

例えば、高齢者に多くみられる脱水症状は、血液中の水分を低下させて脳血管疾患のリスクが高まることから、1日に1,500~2,000ml程度の水分摂取が必要であると言われています。


介護予防·フレイル対策·認知症予防

いつまでも介護を受けず元気に過ごすために、介護予防、フレイル対策、認知症予防に取り組む高齢者が増えています。


介護予防

介護予防というと運動やリハビリに取り組んで、運動機能を改善させるイメージがあるかもしれませんが、自立した日常生活が続けられることを目的としたものです。

生活の中で役割を認識することができ、生き甲斐を感じ、自己実現を図ることができる、生活の質の向上を目指すことが大切です。


フレイル対策

『フレイル』とは老いによって衰えた状態のことを言い、体重減少や歩行速度の低下、活動量の低下などが顕著にみられ、疲れやすく何事も面倒だと感じるようになることを指します。

フレイルになると、病気にかかりやすく、ストレスにも弱くなってしまいますから、日ごろから適度な運動に取り組み、バランスの良い食事を心がけるなどが大切です。


認知症予防

認知症も年々増加中であることから、予防はとても重要な課題となります。

認知症には、脳血管型やアルツハイマー型、レビー小体型など、さまざまな種類のものがあります。

その中でも「脳血管型認知症」は、高血圧や糖尿病、肥満などといった生活習慣病を予防することが、そのまま認知症予防に繋がります。

特に、高血圧は認知症発症に大きな影響を与えるために、血圧管理が重要であると理解しておきましょう。

健康寿命後に介護が必要になった場合には

介護の様子

健康に留意して生活しているとしても、病気や介護状態になる可能性は避けられません。

そのため、病気や介護状態にならない対策だけではなく、有料の老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の入居といった、介護が必要になった場合の対策も想定しておくことが大切です。

さまざまな医療サポート、またご自身にあった介護や支援を専門のスタッフから24時間体制で受けることができますので、安心した生活を手に入れることができます。

さらに、リハビリや機能訓練によって、いつまでも自立した生活が継続できるよう、取り組むことができます。

介護の必要は日々進行してきますので、必要になってからでは手遅れになりかねません。そういった意味でも、健康寿命(女性75.38歳、男性72.68歳)が、高齢者施設入居検討のボーダーラインになるかもしれません。

まとめ

日本は世界有数の長寿国となりました。しかし、長生きだけではなく健康に過ごすことが大切で、病気や介護を受けないように予防することが大切です。

データ上では女性が約12年、男性が約9年程度、病気や介護が必要になることが知られています。そのような現状を把握したうえで、高齢者に多い病気にならないように普段から意識し、介護状態の原因をつくり出さないように心がけてください。生活習慣病を予防し、病気の予防や重症化を防ぎ、介護予防や認知症予防に努めていくようにしましょう。