「人生の最後は、愛する家族に囲まれながら惜しまれつつ最後を迎えたい」と誰もが自分の人生の最後について考えるのではないでしょうか。しかし、現実とそれを取り巻く環境は大きく変わりつつあります。
総務省統計局が2020年9月15日に公表した「高齢者人口の割合」では、日本の高齢者人口の割合は世界最高を記録しました。また、総人口は前年に比べ 29万人減少しており、日本の「少子高齢化」問題が年々深刻になっていることを表しています。
同時に、「高齢化社会」が抱える問題も多様化し、加速しています。高齢者の就労問題、介護及び福祉の課題と改善、そして増加する高齢者の一人暮らしとその果ての孤独死です。今回はこの「高齢者の孤独死」について、その問題点と対策を紹介していきます。
高齢者の孤独死に関する統計
孤独死の7割は65歳以上の高齢者!
国土交通省が集計した「死因別統計データ 」によると、2003年時点では1,441人だった65歳以上の高齢者による孤独死数が、2018年には3,867人となり、15年の間におよそ2.6倍増加しています。さらに、15~64歳の孤独死数が大きな変化を見せていないことに比べ、65歳以上の高齢者の孤独死数は2003年から2013年の10年間で約2倍になり、2015年以降は毎年3,000人以上の高齢者が孤独死を迎えたことがわかります。
またその孤独死の原因に関してですが、最も多い死因は病死で62.3% 。次いで自殺11.3% 、事故死1.8% となっています。
- 孤独死の7割は65歳以上の高齢者
- 孤独死の62.3%は病死
高齢者の孤独死に関する問題点
高齢者の孤独死で問題とされる点は大きく分けて下記の2つが挙げられます。
①金銭的な問題
②コミュニケーション不足
①金銭面の問題については、下記の記事をご覧ください。
ここではもう一つの問題である「②コミュニケーション不足」についてクローズアップしていきましょう。
家族とのコミュニケーション不足
家族は、最も身近で異変を察知してくれる相手です。家族と接する機会が減れば、自身の異変に気づく人が高齢者本人しかおらず、誰にも頼れない状況が続き、そのまま孤独死を迎えるというケースが考えられます。厚生労働省の「我が国の高齢者を取り巻く状況」によると、高齢者の単身世帯(一人暮らし)が増加しており、最も身近な家族とのコミュニケーションが取りにくい状況であることが分かります。
数値的に見ると、1986 年から2015 年の約30年間で高齢者の単身世帯は約2倍に増加しています。また、夫婦のみの世帯も増加傾向にあるのに対して、3 世代世帯は44.8 % から12.2 % 、おおよそ4分の1 減少しています。このことからも、1人で暮らしている高齢者が増えたことによって家族間のコミュニケーションが少なくなったことが見受けられます。
近所とのコミュニケーション不足
「遠くの親戚より近くの他人」。近所の人は、家族の次に異変に気付いてくれる方かもしれません。それでは、近所の人とのコミュニケーションはどうでしょうか?
1988年では親しくつきあっている近隣住民がいるという割合が64.4% だったことに対し、2014年では31.9%と半分以下に減っています。残念ながら家族だけでなく、近所の人ともコミュニケーション不足が起こっていることがわかります。
それでは都市規模別ではどうでしょうか?大都市が22.8 %で一番交流をしていないことが一目瞭然です。
以上より、一人暮らしする高齢者が増えたことによって家族間や近隣の人々とのコミュニケーションが不足し、高齢者自身に異変が起きたとしても早期発見、または他者に頼ることができず、孤独死に至るという問題点が伺えます。
高齢者の孤独死に関する対策
それでは具体的に、どのようにして高齢者の孤独死を防ぐのでしょうか。今回は対策として、「高齢者の見守りネットワーク」をご紹介します。
東京都福祉保健局が発行している「高齢者等の見守りガイドブック( 第3版)」によりますと、「介護保険法において、高齢者が地域で自立した生活を営むことを可能とする地域包括ケアシステムの構築が、国及び地方公共団体の責務であり、規定されている」とのことです。医療、介護、予防、住まいと並んで、見守り等の生活支援は行政課題であるとも記載されています。
以下の図は、同ガイドブックより引用したもので、大きく分けて3つある見守りの方法がわかります。
このように、高齢者を孤独死させない対策が各地域及び自治体で取り組まれています。名称を含め、施策はそれぞれの地域及び自治体で異なっていますので、詳細は相談窓口にお問い合わせすることをおすすめします。
上記の他にも、郵便局の「郵便局のみまもりサービス」や、家電等の使用状況や室内に設置したセンサーを使った民間の見守りサービスがあります。
高齢者の孤独死と介護
サービスが充実していたとしても、一人暮らしをしている以上、孤独死の可能性は避けられません。
こちらの解決策として挙げられるのは、有料の老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の入居です。専門のスタッフが対応するので心配事が減り、孤独死も避けられます。
サービスや入居条件等、自分に合ったものを選択できるところも利点です。
生きている限り、死は必ず訪れるものです。しかし、いざ高齢者になったとき、孤独死を迎えるか否かは自分で選択できると信じています。どうか1人で悩まず、ご相談下さい。そのときは、今回紹介したサービスや介護がお力になれれば幸いです。