2025年には、高齢者の5人に1人は認知症を発症すると予想されています。大切な家族が認知症になったら誰に相談しますか?多くの方は途方に暮れ、どうしたらいいか分からないと悩むことになるでしょう。認知症カフェは、そういった認知症患者とその家族、また同じ悩みを抱える地域の方々と交流できる場所です。今回は、千葉県稲毛区にある認知症カフェ「and all cafe」でお話を伺いました。

認知症カフェとは

まだまだ聞きなれない人も多い認知症カフェとは、一体どういうところなのでしょうか?認知症カフェへの取り組みは2012年、厚生労働省が「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」の制定から始まりました。

そして、市区町村、NPO法人、社会福祉法人など、官民一体となって瞬く間に認知症カフェの運営が全国へ広がっていきました。全市町村にひとつ設置することを目標に掲げ、認知症について気軽に交流や相談ができる場所として認知症カフェの普及を目指しています。

このように認知症カフェは、認知症患者とその家族を支援するため、同じ悩みを抱える人や専門家と情報を共有し、お互いを理解し合う場所なのです。


認知症カフェの目的

and all cafe

そして認知症カフェの目的について、「and all cafe」広報担当の松崎由絵氏は次のように説明します。

「認知症の介護者は『一人ぼっち感』があるんです。どうして自分がしなくてはならないのかとか、考えてしまうんです。仕事ではないからこその悩み、それを共感共有する場所が認知症カフェなのです」。

家族だからこそ冷静に対応出来ない介護者の方も多く、それにより家族との関係が悪化してしまう事もあります。そんな時、同じ境遇の人と語らい『上手く行かないのは自分だけではない』と知り、心を軽くしてもらうのが認知症カフェ「and all cafe」の目的であると言います。


認知症カフェの利用者

認知症カフェの様子

「and all cafe」のポスターには「認知症や介護の悩み、情報交換したい、誰かと話したい…。育児と介護のダブルケアしているママ!カフェで一緒にお話しませんか?」と書かれていました。

「認知症カフェなので、認知症の方やそのご家族に来てほしいのは勿論ですが、いろんな人に来てほしい。核家族化が進んで年代を超えた交流が減って来ているので、若い世代の方、育児も介護も頑張ってるダブルケアラーの方にも来て頂きたいです」。(松崎氏)

認知症カフェで行われていること

認知症カフェでは主に認知症患者とその家族に対する相談と交流が行われています。


認知症に関する相談

and all caféで一番多い相談は、認知症と診断されてどうしよう…という診断直後のご家族からの相談だと松崎氏は説明します。「家族の介護をするのに、自分の生活がどう変わっていくのか。これからどうしよう、仕事は辞めなきゃいけないの?施設も探さなきゃ。でもどこの誰に相談して良いんだろう…」など、診断直後はご本人よりご家族の方が混乱されている事が多く、それで認知症カフェを検索して相談に来られる方が8割程度だといいます。


交流会

カフェ交流会チラシ

「and all cafe」のカフェ交流会は毎月第4月曜に開催されています。

交流会は予約も必要ないので、何となく集まって好きなように話して帰っていく感じです。また、初めて参加される方がいる時は自己紹介から始めて、その方の話を掘り下げていくなど、自由なコミュニケーションが行われています。

話題は同僚や友人には話しづらい介護や育児については勿論、最近オープンしたお店の話まで内容は何でも気楽に話せるので、盛り上がって女子会のようになってしまう事もあるそうです。

参加費無料、飛び入り参加も歓迎、またzoomでも交流が出来る為、遠方で足を運べない方や外出が難しい方も参加する事が出来ます。中には仕事の休み時間を利用して参加された方もいらっしゃると言います。

認知症カフェの利用方法

カフェメニュー

今回取材させて頂いた「and all cafe」は、他にはあまりない特別養護老人ホームに併設された常設のカフェで、一般的に認知症カフェは、月一回、週一回など、2~4時間程度の短時間で限定的に開かれています。殆どは予約の必要はありません。認知症に興味がある方ならどなたでも利用できるのが特徴です。最近では、大手のカフェや飲食店が主催となって店舗で開催される事もあり、以前よりも広く存在を知られるようになってきています。

また「and all cafe」では入店し、カウンターで注文、会計を済ませてから席に着くスタイルです。飲み物類は200円前後とリーズナブルなところも魅力的です。


認知症カフェでの過ごし方

認知症カフェの様子

「ここでは認知症の方やそのご家族が一緒に来られてお茶をしながら一緒にぼんやりされていたり、ランチしたりされています。子供を幼稚園にお迎えに行く前に少しお茶をしに寄られるお母さん、杖を突いていらっしゃる常連さんも。認知症カフェというと認知症の方の為だけのカフェと思われがちですが色々な人が来ます」と松崎氏は説明します。

色々な人が来て多世代交流の場となっています。また、認知症というのは余り人に知られたくないので話すことをタブー視されてしまいがちですが、ここではそんな事はなく、何でも話していい場所です。どんな話でも聞くし、共感するし、専門家だからこその対応もできるといいます。

認知症カフェと言うより、『認知症の人でも安心して行きやすいカフェ』の方がわかりやすい表現かもしれません。

今回お話を伺った認知症カフェ【and all cafe】

and all cafe外観

木を基調とした落ち着いた雰囲気の店内は、感染症対策も万全で通路は広く取られており、ガラス張りの大きな窓からは柔らかな陽光が射しています。

2018年4月、社会福祉法人煌徳会 特別養護老人ホームとどろき一倫荘に併設されたカフェで、特別養護老人ホームとどろき一倫荘の開設と共にオープンし、施設の利用者さんやそのご家族、ご近所の方や職員さん達が気軽に利用できるようにと作られました。新型コロナウイルス感染症の流行以前は、面会に来たご家族が利用者さんと寛ぐスペースとしてもよく利用されていたそうです。

「どなたでも安心して来てほしい」と来店する人を優しい気持ちで迎え入れてくれる。

認知症カフェ「and all cafe」はそういう場所です。