現在、日本の高齢者(65歳以上)は人口全体の28.4%、つまり全体の4分の1以上を占めています(令和 2 年版「厚生労働白書」より)。
そこで注目を集めているのが「老後の住まい」です。どこでどのように老後を過ごすかは、高齢者本人だけでなく高齢者の家族にとっても大きな関心事となっています。今回は「老後の住まい」となるさまざまな施設や、それらを選ぶ際のポイントについて解説していきます。
老後の生活は「住まい」で変わる?
どのような「住まい」を選ぶかは、老後の「生活の質」に大きく影響します。すでに介護や介助を必要としている方はもちろん、今は健康でもこの先何が起こるかわからないと考えている方にとっても「健康的な生活をサポート」してくれる老後の住まいは大きな関心事といえるでしょう。
老後の住まいには「公的」と「民間」がある
老後の住まいと聞いて、多くの方は真っ先に「老人ホーム」などの施設をイメージするかもしれません。しかしこれらの施設には「公的」なものと「民間」のものとがあり、それぞれ入居の条件やサービス内容が異なります。
公的施設の「特別養護老人ホーム」
公的な老人ホームとして有名なのが「特別擁護老人ホーム(特養)」です。運営するのは自治体や社会福祉法人などで、平成29年の時点で約9,700施設があります(厚生労働省「介護老人福祉施設」資料より)。
特養の特徴は手厚いサービスと、比較的費用が安いという点です。特に日常生活の中で必ず発生する食事・入浴・排泄などをしっかりサポートしてくれるため、要介護者の高齢者やその家族にとって心強い存在といえるでしょう。
一方で、入居には「要介護3以上」という条件があります。介護や介助の必要を感じていても、現時点で要介護2以下という方は原則入居できません。また人気が高いことから、地域によっては条件を満たしていても「入居待ち」となるケースが多いようです。
民間施設の代表格「有料老人ホーム」
民間施設の代表格は「有料老人ホーム」です。サービスの充実は特養以上で、食事・入浴・排泄の介護はもちろん、施設内でのレクリエーションや季節のイベントなど、生活を楽しむためのさまざまなサービスが提供されています。
入居の条件が比較的緩いのも大きな特徴です。施設によって多少違いますが、多くの有料老人ホームでは要介護2以下の高齢者や自立生活が可能な高齢者も受け入れています。月額費用は特養の2〜5倍程度で、高額な「入居一時金」が必要なところもあります。
建設ラッシュが続く「サービス付き高齢者向け住宅」
近年増えている民間施設が「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」です。平成23年10月から始まった比較的新しい制度ですが、有料老人ホームと同等以下の費用で入居できること、専門家による安否確認サービスや生活相談サービスなどが受けられることから人気が高まっています。
一方、特養や有料老人ホームでは標準だった食事や介護サービスは別途契約するのが一般的です。また基本的には「個別の住宅」という扱いのため、入居者が自立して行えることは本人に任せ、できない部分をサポートするというスタンスになります。
それでも「いざというときに専門家が近くにいる」という安心感は大きく、また施設によっては介護事業者や病院と提携して、有料老人ホーム以上の手厚いサービスを提供しているところもあり、持ち家を手放して「夫婦揃って入居する」人も少なくありません。
高齢者でも安心して住める「シニア向け賃貸住宅」
シニア向け賃貸住宅とは、バリアフリーなどの設備が充実したシニア専用の賃貸マンションのことです。一般的な賃貸マンションのように比較的簡単に契約・解約でき、サ高住のような食事や生活支援サービス、デイサービスなども別途契約できる自由度の高さが魅力です。
一方で入居の条件が「介護を必要としない元気な方」となっていたり、より高度な介護が必要になると対応できない(有料老人ホームなどへの移動が必要になる)施設もあります。
老後の住まいを選ぶポイントと注意点
老後を安心して過ごせる理想の住まいを見つけるためには、いくつもの施設を比較検討し、可能な限り自分の目で確認することが大切です。ここでは住まい選びの際に気をつけるべき3つのポイントについて説明します。
①立地に注目する
駅や商業施設に近い便利な場所、郊外の静かな場所など、施設の立地はさまざまです。老後の住まいとしてどのような場所に住みたいのか、しっかり考えて選ぶと良いでしょう。入居者にとって思い入れのある土地や、家族が訪問しやすい場所かどうかも重要なポイントになります。
②サービス内容を比較する
どのようなサービスを提供しているかも注目ポイントです。介護サービスを重視するなら、特養や老人ホームだけでなく「介護事業者などと提携しているサ高住」も有効な選択肢でしょう。医療機関や警備会社と提携しているかどうかもチェックしておいてください。
食事などの生活サービスも同様です。どこで(誰が)作るのか、持病や好みに合わせた食事に対応してくれるのか、一日に何食出してくれるのかなど、細かい部分まで確認します。もちろん食費も重要なポイントです。
入居条件・契約条件の確認も忘れてはなりません。要介護でも入居できるのか、入居中に要介護になった場合はどうなるのか、入居時に支払う一時金や敷金は帰って来るのかなど、いざというときにトラブルにならないよう注意しておきましょう。
③予算に余裕を持たせる
入居一時金や月額の費用など、入居にかかる費用も気をつけるべきポイントです。特に「年金などでギリギリまかなえる」ような場合は要注意。入居後に要介護度が上がった場合や、ケガや病気をした場合の出費を考え、多少の余裕(少なくとも2〜3割)を残すようにしてください。
まとめ
特養や有料老人ホーム、サ高住、シニア向け賃貸住宅など「老後の住まい」はさまざまです。今回はそれぞれの施設の特徴や選び方のポイントについて説明しましたが、実際に選ぶ際は自治体の窓口や各エリアにある「地域包括センター」も活用して、慎重に比較検討するようにしましょう。