介護業界において2025年は大きな分岐点となる年です。なぜなら団塊世代が75歳の後期高齢者になる年で、高齢化が急速に進むためです。

この影響により引き起こされる問題は、2025年問題と呼ばれ、介護業界の直近の課題となっています。

例えば、認知症患者の増加や介護人材の不足、介護サービスを受けたくても受けられない介護難民の増加といった具合です。本記事では2025年問題の基礎知識や、介護難民になるのを防ぐ対策について紹介します。

そもそも2025年問題とは?

2025年問題とは、戦後のベビーブームに生まれた「団塊世代」が75歳になることで引き起こされる問題の総称です。

下記の厚生労働省の「日本の人口ピラミッドの変化」において、団塊世代が突出して人口の多い世代とわかるでしょう。

(出所)総務省「国勢調査(年齢不詳をあん分した人口)」および「人口推計」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計):出生中位・死亡中位推計

2025年の75歳以上が全人口に占める割合は18%で、2065年には26%に達すると予測されています。

つまり、団塊世代が75歳になることで高齢化が急速に進み、介護人材の不足や介護難民の増加が懸念されています。

2025年問題で考えられる影響

2025年問題が介護業界に与える影響は以下の4つです。

  • 認知症患者・要介護者の増加
  • 介護人材の不足
  • 介護財源の圧迫
  • 介護難民の増加

このように2025年問題は、介護施設や介護職・介護を受ける高齢者・国や地方自治体など、社会に大きな影響があります。


認知症患者・要介護者の増加

後期高齢者が人口に占める割合が高まることで起こる問題は、認知症患者・要介護者の増加です。

厚生労働省の「令和2年度 介護保険事業状況報告」によると、要介護・要支援認定者数は2021年3月時点で682万人でした。2000年の256万人と比較すると約2.6倍で、前年から13万人も増えています。そのため、今後も要介護人者数は、右肩上がりに増えていくと予想できます。

(注)平成29年度から全市町村で介護予防・日常生活支援総合事業を実施している。

介護人材の不足

認知症患者・要介護者の増加により、引き起こされる問題は介護人材の不足です。

令和3年の「介護人材確保に向けた取り組み」によると、2025年の必要な介護職員は243万人で、2019年よりも約32万人も増やす必要があります。

「第8期介護保険事業計画に基づく介護人材の必要数について(令和3年7月9日)」別紙より

さらに今後も要介護者数は右肩上がりに増加すると予測されているため、2040年には約280万人が必要です。少子化によって労働人口が減少している日本において、介護人材の確保が難しくなっています。

その証拠に人材不足や競争激化などを理由に、2022年の介護施設の倒産件数は143件と過去最多を更新しています。

出典:東京商工リサーチ「コロナ禍と物価高で急増 「介護事業者」倒産は過去最多の143件、前年比1.7倍増~ 2022年「老人福祉・介護事業」の倒産状況 ~


介護財源の圧迫

2025年問題により深刻になるのは、介護財源の圧迫です。

要介護者が増えるほどに介護サービスの利用者数が増えるため、介護保険の保険給付も増えるためです。2019年には保険給付が10兆円を超え、2023年は13.5兆円が予算として組まれています。また後期高齢者が増えることで、医療・年金などの社会保障費も増えます。

社会保障給付費の推移は以下の図のとおりです。

高齢化が進むにつれ、社会保障給付費が増え続けていることがわかります。

このような状況から、介護保険制度の見直しの際に「介護保険料の引き上げ」や「高齢者の負担引き上げ」などが検討されているのです。


介護難民の増加

介護人材の不足・高齢者への負担増などにより危惧されているのが介護難民の増加です。介護難民とは要介護状態であるにもかかわらず、施設・自宅などで適切な介護サービスを受けられない人を指します。

例えば、特別養護老人ホームへの入所を希望しているのに空きがなくて利用できなかったり、通所サービスを利用しようとしても介護職不足で断られたりといった具合です。

介護難民は2025年以降増えると考えられており、必要なサービスが受けられないことによる「孤独死」や「老々介護」などの増加も懸念されています。

2025年問題に対する介護業界の変革

2025年問題に対して、介護業界は何も手を打っていないわけではありません。介護人材の労働環境・処遇改善、あるいは外国人介護士の活用などが進められています。この章では介護業界の新たな取り組みを紹介します。


介護人材の労働環境の改善

介護人材の不足に対応するには労働環境を改善して、離職を予防することが重要です。介護事業者ができる取り組み例は以下のとおりです。

  • 就業規則を見直し、働きやすい環境を構築する
  • パート職員から正職員への登用制度を構築する
  • 助成金を活用して研修制度を整備する
  • ノーリフトケアを導入する
  • 見守り支援ロボットを導入する

介護職は離職率が高いというイメージが強いかもしれません。しかし、このような取り組みが進められ2022年の離職率は、14.3%と全産業平均と大差ないレベルにまで下がっています。

なお、介護職の離職率の推移は以下のとおりです。


介護人材の処遇改善

2025年に向けた介護人材の確保のために進められているのは、介護職の処遇改善です。

介護職は「給料が安い」というイメージが強い方もいるでしょう。しかし年々見直しが進められています。その証拠に、「介護職員等ベースアップ等支援加算」を取得している施設において、2022年の介護職員の平均給与額は318,230円でした。1年にすると381万円となります。

全産業の平均給与443万円と比較するとまだ開きがありますが、今後も処遇改善が手厚くなると予想されています。


外国人介護士の活用

2025年問題の介護人材不足に対する取り組みとして期待されているのは、外国人介護士の活用です。2019年度時点で、EPAに基づく介護福祉士候補者の累計受け入れ人数は5,000人を超え、今後も増えると見込まれています。

介護難民にならないよう早めに行動しよう

高齢者や被介護者を家族に持つ方にとって、2025年問題による大きな影響は介護難民の増加です。いざ施設に入居しようとしても、できない可能性もあるためです。

2025年問題の対処としてケアマネジャーなど相談できる方を作ったり、相談窓口を確認したりしておくと良いでしょう。また、入居先として有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅もおすすめです。

「どうしよう」とお困りの方、「もっと詳しく知りたい」という方は、お気軽にご相談ください。