日本は現在、高齢者の人口増加に伴って、医療や介護などさまざま方面で課題がみられます。一方、こういった状況においても、健康寿命を延ばし、多くの人が安心して暮らせる環境づくりがすすめられています。では、高齢者にとっての最適な生活空間とはどのようなものなのでしょうか?老後も孤立することなく、快適に住むことのできる環境について解説します。高齢者向け住宅への住みかえについて検討している人も、参考にしてみてください。

高齢者が住みやすい街

住みやすい街のイメージ

令和3年版高齢社会白書」によると、65歳以上の者のいる主世帯の8割以上が持ち家に居住しているといった結果がみられます。また、個人によって家庭状況等さまざまではありますが、高齢者だけの世帯が増えているといったことから、病気・ケガや困ったときに周りに助けを求められないことも考えられるでしょう。

そのほかに、詐欺などの犯罪も増加傾向にあり、65歳以上の人が関与する消費生活相談は令和2年の統計では約27万件にものぼるようです。そのため、周囲との連携体制が整っていないことは、老後の不安につながるといえます。

つまり、高齢者が住みやすい街とは、自宅を中心とした近隣に、医療機関や介護を受けられる施設があり、日々の生活を送るうえで交通便がよく買い出しがしやすいこと。また、病気やケガをしたときに支えてくれたり、困ったときに相談にのってくれたり、さまざまな支援をしてくれる地域とのつながりがあることです。

各地方自治体では、介護が必要な人も、住み続けた地域で生涯を終えられるように、住まいや医療・介護などが一体的に提供される仕組みが整えられており、長寿社会に向けて、健康を保持しながら社会参加ができる街づくりが目標になっています。

高齢者が住みやすい物件

住みやすい物件の様子

持ち家からの住みかえを検討するのであれば、暮らし方へのニーズにも合わせて、高齢者が住みやすい住宅探しができるでしょう。

まず、住みやすいようにバリアフリー化され、暮らしを豊かにするサービスの提供を受けることのできる高齢者向け分譲マンションがあります。バリアフリー構造や車椅子でも利用しやすい引き戸など、暮らすのに便利な設備が整っています。なかには、食事の提供や家事代行、フィットネス施設など、より快適に過ごせるような工夫のある住居もあるため、自由度が高い暮らしを楽しめるでしょう。物件価格は高めですが、購入後は自分の資産として残せるため、売却や賃貸、子どもへの相続も可能です。ただ、介護サービスの提供が義務付けられていないため、今後介護が必要になった場合、新たな対応が必要になります。

つぎに、高齢者向け賃貸住宅は、バリアフリー化された構造の住宅です。賃貸のため、毎月の家賃支払いが必要になりますが、ローンや建物の維持・管理などの負担がありません。また、介護サービスのほかにも、生活の支援が提供されていないといった特徴があります。一方、老後も暮らしやすくなるような支援を受けられる「サービス付き高齢者向け住宅」もあります。高齢者向け分譲マンションの良さを取り入れており、バリアフリー構造のほか、見守りや生活に関する相談などの支援が義務付けられています。

高齢者が住みやすい室内環境

バリアフリーのイメージ

高齢者のために住みやすい室内環境を整えるには、バリアフリーを取り入れていることが大切です。すでに古い構造の持ち家であれば、バリアフリーをメインにしたリフォームが必要になります。

たとえば、高齢になると、足腰の衰えからちょっとした転倒で骨折してしまうこともあるため、できるだけ自分の足で家の中を移動し、元気に過ごすためにも転倒防止の対策をしましょう。

また、車椅子での生活が始まることを想定して、廊下やドア幅を広くとるようにします。そして、水周りの使い勝手の良さもポイントです。足をとられて転倒しないよう、浴槽の立ち上がり部分に滑り止めなどを施し、手すりをつける必要もあるでしょう。

以上のように、一人でも身の回りのことがしやすいように、室内設備を整えることが大切です。もし、高齢者向けの住宅への住みかえを検討するのであれば、より快適に過ごせるような物件を見つけることもできます。

高齢者にとって最適な生活環境として注目の「サ高住」とは

サ高住の様子

住宅火災による死者数の約7割が65歳以上といったデータ(「令和3年版高齢社会白書」)から、高齢で一人暮らしをする親が心配な家族も多いようです。

そのため、老人ホームなどの施設に比べて気軽に入居できる、高齢者向けの物件を検討する人が増えています。

なかでも、国土交通省と厚生労働省が平成23年10月よりスタートさせたサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、元気な高齢者から軽度の介護が必要な人まで安心して暮らすためのサービスが提供されています。食事のできるレストランの併設のほか、賃貸契約であることから、費用もリーズナブルで退去する際もスムーズ、といった点から注目されているのでしょう。

より良く暮らせるような環境を

老後、最適な生活環境で暮らすためには、さまざまな準備が必要になります。そのため、必要に迫られてから行動を起こすのではなく、元気なうちから準備することが大切です。

高齢者自身が興味を示さないようであれば、家族が、サービス付き高齢者向け住宅への住みかえなどを提案して、より良く暮らせるような環境を用意するのもいいでしょう。